2011年3月20日日曜日

リスク評価の問題点の解明: 「市民の科学への不信」はいかにして形成されるか(2011.3.20)

311以降、「放射能のリスク評価(※)」が我が国最大の問題となりましたが、放射能に固有の問題は別にして、リスク評価が抱える基本問題は311前から変わっていません。
その意味で、以下で論じたリスク評価論の基本問題の解明は「放射能のリスク評価」を検討する上で、なお意義があると考え、再掲することにしました。

(※) 食品安全委員会の定義では、食品の健康に及ぼすリスク評価とは、人が食品中に含まれる添加物、農薬、微生物等のハザード(危害要因)を摂取することによって、どのくらいの確率でどの程度の健康への悪影響が起きるかを科学的に評価すること(食品安全基本法11条でいう食品健康影響評価のこと)。これによると、「放射能のリスク評価」とは、人が環境中の放射能を外部被ばくおよび内部被ばくすることにより、どのくらいの確率でどの程度の健康への悪影響が起きるかを科学的に評価することである。

以下の目次の項目をクリックすると、その項目についての文章にジャンプします。

また、前半(はじめにと第1部)の全文は->こちら  後半(第2部)の全文は->こちら

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「市民の科学への不信」はいかにして形成されるか
――「歪曲」されたリスク評価の事例の検討――
福岡伸一ほか「安全と危険のメカニズム」(2011年新曜社)より。

                     目 次
はじめに――問題の分類――
1、問題提起
2、問題の整理

第1部:古典的リスク評価の検討――事例検討――
1、遺伝子組換え技術
2、遺伝子組換え技術は2度操作する
3、遺伝子組換え技術の事例――GMイネの野外実験――
4、悪夢から眺めた仮説
5、古典的テーマ――耐性菌問題
6、仮説の検証(1度目の操作:研究段階
7、仮説の検証(2度目の操作その1:国の事前審査の段階)――消えた耐性菌問題――
8、仮説の検証(2度目の操作その2:裁判手続きの段階)――耐性菌問題の創作物語――
9、世論操作の動機(最大の評価ミス:ディフェンシン耐性菌の危険性について)
10、二度目の操作の防止

第2部:現代型リスク評価の検討――理論検討――
1、序論
2、問題の提起
3、リスク評価の基本問題
4、リスク評価とは何か<その1>
5、リスク評価とは何か<その2>
6、リスク評価とは何か<その3>
7、リスク評価とは何か<その4>
8、リスク評価とは何か<その5>
9、リスク評価の迷妄の打破のために
10、リスク評価論の外<芸術裁判の躓きその1>
11、リスク評価論の外<芸術裁判の躓きその2>
12、リスク評価論の外<芸術裁判の躓きその3>
13、リスク評価論の外<科学裁判の躓きその1>
14、リスク評価論の躓き
15、科学の限界の不承認について
16、善(倫理・法律)の判断とはどういうことか
17、美(快・不快)の判断とはどういうことか
18、リスク評価の判断者とは誰か
19、現代型リスク評価の課題(小括)
20、法律家にとってのリスク評価1(食の安全と職の安全)
21、法律家にとってのリスク評価2(法律家の戸惑いの告白)

2011年3月1日火曜日

「遺伝子組み換えイネ裁判- 市民の、市民による、市民のための法廷」のご案内(2011.3.1)



「遺伝子組み換えイネ裁判-
市民の、市民による、市民のための法廷」のご案内 
2011年3月1日

2010年11月24日、6年間にわたる「遺伝子組換えイネ野外実験中止を求める裁判」は、「危険が証明されていない」という腰の砕けた東京高等裁判所の結論で終わりました。
何といっても科学裁判です。難しいとお思いでしょう。ところが、科学裁判を難しくさせているのは、情報を隠そうとする被控訴人(研究所)側の専門家と、情報から逃げようとする裁判所のせいであることが分かりました。
そこで、6年間で中学生になった私たちが、市民による理想法廷を演じてみることにしました。演じることにより考え、真実を伝え、現実を振動させたいという思いからです。
裁判は公開です(憲法82条)。良心にしたがって演じます(76条)。多くの方々に裁判員、傍聴人としてご参加いただき、ともに考え、笑い、怒って、上越から1000年先の子供達にまでに届くメッセージを送りたいと思います。参加者の抽選はありません。どなたも奮ってご参加ください。

    開催日時:2011年4月9日(土)   
開演受付:13時00分から
開演時間:13時30分から16時30分
「遺伝子組み換えイネ裁判-市民の、市民による、市民のための、市民法廷」 
    開催会場:上越文化会館 中ホール
943-0804 新潟県上越市新光町1丁目9番10号  ℡025-525-4103
http://www.joetsu-bunkakaikan.com/access.html
■参加費 :500円
■参加締日:2011年4月4日(月) 
主催 「新潟遺伝子組み換えイネ」市民法廷実行委員会
協賛 上越有機農業研究会
後援 食政策センタービジョン21/動的平衡基金
連絡先 総合生協生産者協議会 担当大野
 TEL/FAX025-269-5833   seisan.k@gamma.ocn.ne.jp
団 体 名

氏 名

TEL             FAX






遺伝子組み換えイネ裁判の見直し
――市民の広場で開催する、市民の、市民による、市民のための生物災害法廷――

 遺伝子組換え技術は21世紀の最強の科学技術と言われています。話題のiPS細胞は夢の再生医療技術と言われますが、同時にガン発生という悪夢を伴います。つまり最強の科学技術には最悪の危険性が伴うのが科学技術の常識で、2005年と2006年に上越市の北陸研究センター野外実験場で実施された遺伝子組換えイネも例外ではありません。カラシナの遺伝子をイネに組込み、抗菌タンパク質(ディフェンシン)を常時作らせるので病気にめっぽう強い「夢のイネ」だと宣伝されたのですが、しかし、この組換えイネによって、ディフェンシン耐性菌が出現し、これが人類の健康被害と地球環境への甚大な被害をもたらす危険性があると耐性菌研究の世界的権威の平松啓一順天堂大教授ら微生物研究者によってつとに指摘されました。にもかかわらず、北陸研究センターは「耐性菌出現の余地はない」と開き直り、野外実験をやめませんでした。のみならず、組換えイネの安全性全般について行なった北陸研究センターの説明もズサンなもので、これに到底納得できない住民はやむなく、法廷の場で彼らに説明責任を果してもらうため、裁判所に提訴しました。しかし、彼らは法廷でも説明責任を放棄し続け、なおかつ裁判所も北陸研究センターの頑ななまでに無責任な態度を最後まで暖かく見守り続け、科学裁判において裁判所に本来課せられている事案解明の責任を完全に放棄しました。こうして、裁判は、遺伝子組換え技術の危険性について、国営の開発者(元農水省研究所)も国営裁判所も本来果すべき説明責任も事案解明責任も放棄したまま昨年11月幕引しました。
しかし、国家の本来の存在理由は「市民の消滅することのない自然権、すわなち自由、所有権、安全および圧制への抵抗を保全すること」(フランス人権宣言)にあります。従って、エジプトの例を見るまでもなく、国家がその責任を果さないときには、市民は「その政府を改良し、改変し、または廃止する権利を有する」(ヴァージニア権利章典)ものです。そして「この権利は疑う余地のない、人に譲ることのできない、また棄てることのできないもの」(同上)です。
6年間の裁判を通じ、国営の開発者にも国営裁判所にも、遺伝子組換え技術の問題点について、何ひとつ安全性を保全する能力も意思もないことが一点の疑義を挟む余地のない真実とし証明されました。そこで、私たちに残された道はただ1つ、国民主権の原点に戻ることです。それが私たち市民自身の手で、今回の遺伝子組換え技術の危険性について事案解明を果し、耐性菌問題解決のための提言をすることです。それが、49日に開かれる遺伝子組み換えイネ裁判の見直し――市民の広場で開催する、市民の、市民による、市民のための生物災害法廷です。
21世紀は皆さんひとりひとりが文字通り社会の主人公となる世紀です。だから、この法廷の真の主人公も皆さんひとりひとりなのです。未来は我々市民の手にあるのです。どうか、皆さん、皆さんひとりひとりの声と連帯こそが国家が解決を放棄したディフェンシン耐性菌を解決する真の力であることをこの法廷で示し、この力こそ我々市民の消滅することのない自然権、すわなち自由、所有権、安全および圧制への抵抗を保全する原動力であることを、日本の越後南部から全世界に向けて、普遍の真理として確認しようではありませんか。